「竜田川文様」とは、色付いた紅葉が川に流れていく様を意匠化した日本の伝統文様です。流水の文様に秋風に吹かれた紅葉がひらりと川に落ち、流れていくさまを表現しています。 紅葉といえば日本を代表する秋の美しい情景のひとつ。 浴衣の定番柄である、「朝顔」も実は季語は「秋」であることをご存知でしょうか。 洋服以上に気が配られてる着物や浴衣の「柄」に秋のものを身にまとう意味について、「竜田川」と「紅葉」柄を取り上げて調べてみました。
竜田川とは?
竜田川は、奈良県北西部を流れる、竜田山のほとりを流れる川のこと。JR王寺駅から、奈良交通バスに乗って竜田大橋で下車すると到着します。 平安時代の恋多き雅人、在原業平が、一面に紅葉が浮かび真っ赤な紅色である現象を歌った「ちはやふる」から始まる古今集に収められた歌はあまりにも有名で すが、その川が竜田川であるとされています。 平安の世から文化人にも愛される風流な名勝だったようですね。現在でも、紅葉の名所として秋には多くの観光客 が訪れます。 流水紋に紅葉を組み合わせた柄のことを、竜田川模様と呼ばれるようになりました。
着物の紅葉柄
日本に住んでいると花が咲くことで季節の到来を知ることが結構あります。「桜前線」で世間がわきたち、「紅葉狩り」で秋の深まりを感じいる。 着物に描かれる花々と言えば、桜・椿・萩・紅葉・菊…日本の季節を彩る花々が数多く描かれています。着物の柄は、描かれた花が散る頃にはその花の柄は着るもので はないとされています。 紅葉は秋の花で、着物では9月から11月に着る柄と言われています。
着物の柄の粋とは何か
よく「粋」という言葉を耳にしますが、そもそもは江戸時代の美意識でした。 身なりや振る舞いが洗練されていること、所作の美しさを表現する言葉です。では、「粋」をファッションにおいて定義するとどうなるのでしょうか。洗練されている=季節を楽しみ、それに合わせた装いをすることではないでしょうか。 もう少し具体的に考えて、「季節に合わせた」とは、「季節の後取りをしない」こと。それがファッションの「粋」とします。 日本の季節は花に由来することが多くある、というのは先ほど述べた通りです。 「季節に合わせる」つまり、「その時期に咲く花を身にまとう」ことは、季節を身にまとうことに繋がります。
浴衣で秋の柄をまとうこと
柄もさておき、着物も種類に応じて着られる大体の季節が決まっています。 浴衣は6月から9月頃。秋や雪、春の花の柄はよく見かけますがマナー違反なのでしょうか。 答えはノーとも言えず、イエスとも言い切れません。 というのも、青系の紅葉は初夏の着物としても単品で描かれる事もあります。「季節を先取り」している、ということになります。 ですが紅色の紅葉はやはり「秋」を連想させます。その場合は、涼しげな流水紋や一年中着られる柄と組み合わせるなどしてデザインに取り入れられれています。特に涼感を感じる流水文様は浴衣の柄にもピッタリ。竜田川と紅葉の組み合わせは、秋の季節の先取りとして「粋」なファッションであるといえるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。 柄ひとつとっても、その由来から調べてみると意外な繋がりが見えてきたり、日本の美意識を感じることができます。 竜田川文様をはじめ、柄の由来を是非紐解いて、日本らしい夏の楽しみ方をしてみてくださいね。
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