薔薇と聞いて、日本文化を連想する方はあまりいないでしょう。 西洋の花、というイメージが強いと思います。 実際に浴衣の柄でも、古典柄にはほとんど使われず、モダン柄によく用いられるモチーフです。 しかし、意外にも日本でも奈良時代から原産地として薔薇は存在していました。 美しい花として名高い薔薇の歴史を辿りながら、その魅力に迫っていきたいと思います。
◯西洋の歴史
薔薇は、5000万年以上前から存在している歴史ある植物です。 ヨーロッパでは紀元前で栄えている文明の遺跡の壁にも薔薇の花が描かれています。 この時代から、香料用や薬用に利用する為の「薬草」として薔薇の栽培が始まっていたのです。 ときには宗教や権力の象徴として品種改良された薔薇を特別な「勲章」として扱い、また一方では庶民が日常で楽しむ花として、西洋では愛され続けてきたのです。 クレオパトラやローマ皇帝のネロ、ナポレオンの妃であるジョセフィーヌ、有名な歴史上の人物も宝石や金銀以上に薔薇を愛し、観葉植物として改良が進められ多大な発展を遂げてきたのです。
◯日本における薔薇
さて、ここまでは聞かれずとも何となく知っていた内容が多いのではないのでしょうか。 西洋で発展し、進化を遂げてきた美しい薔薇ですが、実は日本の歴史としても根深い植物です。 日本における薔薇の記述は西暦700年代の文献「万葉集」。 日本にも原種である薔薇が存在していました。 薔薇の由来は「茨」(うばら)からと言われています。 実は万葉集だけではなく、平安時代から現代に至るまでのベストセラー、「源氏物語」や、「枕草子」「古今和歌集」にも薔薇が登場します。 西洋の薔薇が日本に渡ってきたのは、江戸時代。 意外にも、西洋の薔薇が渡ってくる前から、日本独自の薔薇をモチーフとして、数多くの歴史を代表する文献にも登場する植物だったのです。 日本原産地の薔薇は今でも自生していますが、花屋さんで見る薔薇のような形ではなく、野草のような花を付けます。 普段見慣れているような形ではありませんが、現在でも日本原産の薔薇は、現在でも品種改良の土台として多く使われています。
先に述べたように、薔薇を品種改良して新しい薔薇を作るという育種をしたのは主にヨーロッパですが、品種改良をするために掛け合わせてきた薔薇は、アジアに自生しているものがほとんどです。 昨今に見られる薔薇は、いわばアジアとヨーロッパのハーフ。 西洋独自の文化だけでなく、地域同士の文化の混ざり合いによって改良されてきた植物なのです。◯モダン柄
モダン柄、と聞くと日本の文化らしくない、と感じる方も少なくないのではないでしょうか。 近年若者に人気の個性的で鮮やかなデザインの浴衣に用いられるモダン柄。 そんなモダン柄によくあしらわれるのが、薔薇です。 西洋のモチーフを日本文化の浴衣に使うなんて!と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。 しかし、薔薇は日本文化に確かに根付いている植物であり、今私達が想像する薔薇も、ヨーロッパ原産とアジア原産の薔薇の掛け合いで作られた、文化の架け橋とも取れるモチーフなのです。 また、薔薇はその色によって意味を変え、印象もガラリと変えてくれる不思議なモチーフでもあります。 赤い薔薇は「愛情」、白いバラは「純潔」、ピンクの薔薇は「しとやかさ」、黄色いバラは「友情」、など… 日本文化の「柄や意匠に意味を込める」という特徴にも、ピッタリと合います。 西洋で愛らしさや美しさで愛されてきたように、鮮やかなものやクラシックなものによってそれぞれの女性の魅力も際立たせてくれます。 全く異種のもののようで様々な共通点がある薔薇と浴衣は、実は相性ピッタリであると言えるのです。 「西洋文化」の象徴である薔薇と「日本文化」の象徴である浴衣の組み合わせ、どんどん素敵なものに思えてきませんか?
いかがでしたでしょうか? 知れば知るほど面白い浴衣柄の文化。 今回はモダン柄の象徴である薔薇について、その歴史を辿りながら、その魅力をご説明させて頂きました! 歴史を知り、日本文化と西洋文化の魅力を知ると、浴衣柄の見え方がどんどん変わってきます。 モダン柄というだけで敬遠してしまいがちな人にこそ、是非着て欲しい薔薇柄の浴衣。 今年は古典柄にも日本文化ならではの魅力があるように、モダン柄の「意味」や「魅力」を、感じ取ってみませんか? ちなみに、薔薇は季語がなく、季節を問わず一年を通していつ着てもよいとされています! お気に入りの一枚に是非、いかがでしょうか? hiyoriでは薔薇をあしらった浴衣も取り揃えておりますので、最後にご紹介させて頂きます