べっ甲(鼈甲)の魅力は、自然が生み出す黄と褐色の色合いの美しさに加え、堅さと軽さを併せ持ち、かつしっかりと手に馴染む質感を備えていることです。
現在、国の伝統工芸品にも指定されているべっ甲、古くから簪(かんざし)として日本の女性の髪を飾ってきました。いわゆるアクセサリーを持たなかった江戸時代の女性たちが唯一身に着けた装飾品がかんざしです。当時から高価だったべっ甲ですが、その使い勝手の良さから庶民たちもこぞって手に入れようとしました。
かんざしの使用後は、メガネ拭きのような乾いた柔らかい布で拭いてから収納してください。天然のタンパク質であるために虫食いが起こる場合があります。長期間しまう場合は直接触れないように防虫剤を入れると安心です。
熱と乾燥が苦手です。保存はエアコンや日光などが直接当たらない場所にしましょう。
べっ甲は日常使いにも最適ですが、天然素材だけに取扱には少し注意が必要です。たんぱく質で構成されているため酸が苦手で、汗や整髪料がついたまま放っておくと、艶を失うことがあります。かんざしを挿したままヘアスプレーなどを使うことも避けましょう。サウナやプールの際は外してください。
また、万が一折れてしまった場合などでも、本べっ甲であれば、同じように貼りあわせて修理ができる可能性があります。お気軽にお問い合わせください。
べっ甲は、「タイマイ」というウミガメの甲羅を原料とする、とても希少な素材です。甲羅を何枚にもにうすくスライスし、それらを熱と水で貼りあわせて作られます。その技術は熟練を要し、国の伝統工芸品にも指定されています。
日本では聖徳太子の昔から、海の宝石として珍重されてきたべっ甲は、透明感のある独特の色味やしなやかな質感が愛され、古くから工芸品や装飾品の材料として用いられてきました。その使い勝手の良さは装飾品のみならず耳かきや眼鏡フレームなどの道具や日用品にも生かされています。
現在、原料となる「タイマイ」の取引がワシントン条約により制限・禁止されているため、条約の制定以前より残った原料で作られた製品のみが流通しています。