輪島塗とは
輪島塗は、石川県輪島市で生産される漆器です。丈夫で美しく、堅牢優美な漆器として全国にその名を知られています。産地である石川県輪島市は能登半島の先端にある、人口3万人足らずの小さな街ですが、輪島塗によって全国にその名を知られるようになりました。古くから日本海海運の要所であった事、けやきや漆など、漆器の素材が多く揃っていたことなどの要素に加え、数多くの行商人、職人、そしてお客様により磨かれてきたことが今日まで続く輪島塗の発展を支えてきました。
輪島塗の作り方
輪島塗は100を超える手作業の工程によって成り立っています。その工数の多さ、また実用品であるがゆえの作業効率の追求から分業が発達し、古くは輪島六職、現在は11の職種に分業されています。
- 輪島塗の完成までの流れは次の通り
- 1. 「塗師屋」が製品の企画・デザインを行う
- 2. 「塗師屋」が「木地師」に木地の制作を発注
- 3. 完成した木地を「下地塗」「研物」「上塗」のそれぞれの職人が塗りを加える
- 4. 加飾する場合、「蒔絵」「沈金」「呂色」の職人が作業
- 5. 「塗師屋」の手元に戻り、問屋や行商を経て、お客様の元へ届く
製品が完成までに数多くの工房を渡り歩き、多くの職人の作業に依って輪島の街全体があたかもひとつの工房の如く働きます。
美しい加飾
輪島塗の魅力は、堅牢さだけにとどまらず、美しい装飾にもあります。「呂色」「蒔絵」「沈金」といった技法が輪島塗の加飾として用いられます。
呂色(ろいろ)
上塗りをさらに研ぎ、漆を刷り込みながら磨き込みます。鏡のような透明なツヤを出します。
蒔絵(まきえ)
上塗りの上から漆で模様を描き、そこに金粉などを蒔きつけ、さらに漆を塗り重ねた上から磨きをかけて固めます。
沈金(ちんきん)
上塗りに模様をうすくノミで彫り、漆を塗りこみます。そこへ金箔を貼り付け、はみ出した部分を拭き取ることによって、模様を浮かび上がらせます。
輪島塗の歴史
古くは縄文時代の移籍田鶴浜町三引遺跡から漆器が出土しています。有史以前の大昔より、この地にて漆器が作られてきたことがわかります。また、最古の輪島塗は輪島市河井町の重蔵権現本殿の朱塗扉と言われています。現在の技法は1660年ごろ、輪島地の粉が発券されたことによって確立したと考えられています。恵まれた海運を活かし、全国へ発達していきました。
1720年頃に大工五郎兵衛によって特長の一つ、沈金の技術が確立されました。それまでほぼ無地であった輪島塗に美しい装飾が加わりました。また、蒔絵は1820年頃会津より安吉が輪島に移住してきたことにより発展を見せ、より豪華な装飾が加わることになります。
輪島漆塗一本簪とは?
石川県輪島市の伝統工芸である輪島塗漆器の技法を用い、漆の深く美しい風合いを生かした、天体をモチーフにした簪です。いくども丁寧に塗り重ねた漆にひとつひとつ絵を描き蒔絵をほどこして仕上げた地球、夜の地球、太陽と月をそれぞれデザインした漆の玉を、シンプルなかんざしに仕上げました。地球儀を連想させるオリジナルの軸を使用しており、漆玉全体をくるりとまわして眺めることができる、伝統的な技術と現代のセンスが融合したかんざしとなっています。
ご協力職人
このたび、かんざし屋wargoの輪島漆塗簪にご協力いただいたのは、呂色職人の升井様です。
「上塗り面を駿河炭で砥ぎだし、さらに生の漆を塗り重ねることで光沢を出します。傷を付けずに光沢を出すため手のひらや指先で磨き上げます。呂色だけでなく、変塗(梨子地塗、青貝塗、乾漆塗、石目塗等)も行っています。」
「輪島塗の伝統技術を生かしつつ、新しい「塗り」と「もの」へ挑戦しています。漆という自然の恵みを現代に活かした制作をしたいと考えています。」