漆とは
漆とは、漆の木から採れる樹液の事を指します。日本では古くから塗料として用いられてきました。
漆塗りで仕上げられた工芸品や道具は漆器と呼ばれ、日本中の多くの地域で伝統工芸品として今も職人による生産が続けられています。
その歴史から、英語では磁器を「China」と呼ぶように、漆器は「Japan」と呼ばれ、世界中に広く知られています。
漆器は深く美しい、漆独特の光沢をまとい、頑丈で、熱や湿気にも強いという特徴を持っています。そのため食器や家具などの日用品をはじめとして、宝飾品や楽器にも多く用いられてきました。
種類
タイやベトナムなどの東南アジアにも広く分布する漆の木ですが、中国や日本で採れる漆の木とは種類が異なります。中国や日本で採れる漆は「ウルシオール」を主成分としています。
日本の漆器には、このウルシオールを主成分とした漆が用いられます。
漆風呂
ほとんどの塗料がその中に含まれる水分が揮発して乾燥、硬化するのに対し、漆は酵素が酸化することによって硬化します。
この酸化が起こりやすい環境が気温25℃、湿度75%の環境です。硬化を促進させるため、この環境を一定に保つ「漆風呂」という専用の設備を用います。
漆は、最初に硬化のタイミングを逃した場合、その後の硬化に極めて長時間を要するという特徴を持っています。
そのため、漆風呂に温度・湿度は「湿し」と呼ばれる水撒きなどで常に管理しています。
かぶれ
漆職人を含め、ほとんどの人が、乾いていない状態の漆が肌に付着した場合、アレルギー反応を起こします。
主な症状はかゆみと水ぶくれです。ひどい場合には皮膚科で治療する必要があります。
漆器に塗られた漆の硬化が充分でない場合にもアレルギー反応を起こしてしまうため、漆器は必ずしっかりと硬化された状態で出荷されます。
また、日本全国に多く生息する漆の木は、秋になると美しく紅葉しますが、近づくとアレルギーを引き起こす可能性がありますので十分にお気をつけ下さい。
蒔絵の工程
漆器に多く使われる手法が「蒔絵」です。漆を塗った上から乾燥前に金属などの粉を「蒔き」、硬化させることで定着させた絵柄です。
蒔絵は、次のような工程を経て製作されます。
1. 漆を塗る前の面を軽く荒らす。
2. かすれや厚みのむらが出ないように、筆で絵漆を塗る。
3. 漆が硬化する前に、金属の粉を一定に蒔く。
4. 漆風呂に入れて硬化させる。硬化した後、余分な金属を払い落とす。
5. 金属の粉に、染みこませるように漆を塗る。
6. さらに漆風呂に入れて硬化させる。
7. 硬化したら、表面を仕上げて完成。
会津塗りとは
会津塗りの発祥は室町時代と伝えられています。
天正18年(1590年)に、蒲生氏郷が木地師や塗師といった職人を連れて領主になり、漆器作りを奨励したことで、会津漆器は産業として大きく発展しました。
会津塗が得意とする花塗は、上塗りの漆の艶をそのまま生かした塗立て方法です。
使い込むほどに艶を出し、華やかな印象へと変化していきます。