愛くるしい容姿でペットとして非常に人気のある猫。
しかしそんなかわいい外見をもつ一方で、日本では古くから猫は妖怪になると信じられてきました。
その証拠として、多くの浮世絵や書物に猫をモチーフとした妖怪が登場しています。
同じくペットとして人間の生活に身近な犬の妖怪は聞かないのに、どうして猫は妖怪として扱われるようになったのでしょうか。
ここでは、猫が妖怪になった所以と代表的な猫の妖怪を紹介します。
なぜ猫は妖怪になったのか?
猫が妖怪として考えられるようになった原因は以下のような特性があるからだと言われています。
・夜行性で目が光る
・時刻、環境によって瞳の形が変わる
・背中をなでると静電気で光る
・足音を立てずに歩く
・爪が鋭い
・身軽で俊敏
・気まぐれな行動
従順で明るいイメージのある犬と比べて、猫は神秘的でミステリアスなイメージがあります。
可愛いのにどこか不気味な雰囲気を纏うことから、愛玩動物である一方で妖怪を思わせる存在でもあったのでしょう。
何を考えているのかよく分からないミステリアスなイメージから、さまざまな猫の妖怪が言い伝えられてきたと言われています。
代表的な猫の妖怪3つ
では、猫の妖怪には具体的にどんな種類があるのでしょうか?
数多く言い伝えられている猫の妖怪の中でも、広く知られている有名な妖怪を3つ紹介します。
猫又
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まず一つ目は猫又。非常に有名な妖怪なのでその名前を聞いたことがある人も多いことでしょう。大人気アニメ「妖怪ウォッチ」のジバニャンも猫又をモチーフとしたキャラクターです。
猫又は年老いた猫が化けた妖怪で、大柄な猫のような外見で尻尾が2つに分かれているという特徴があります。性格は多種多様で、凶暴で人間に悪さをする猫又もいれば穏やかで飼い主に恩返しをするような猫又もいます。
猫又には、ペットとして飼われていた猫が化けた猫又と野生の猫が化けた猫又の2種類がいると言われています。
ペットの猫が化けた猫又が書かれたものとしては、鎌倉時代の「古今 著聞集」があります。古今著聞集には、山荘で飼われていた猫が秘刀をくわえて逃げ出しそのまま姿を消したと記述されています。その頃から「飼い猫が年をとると猫又になり人を襲って食べたりさらったりするようになる」と語られるようになったのでしょう。江戸時代以降には、「人家で飼われている猫が年老いて猫又に化ける」という考えが一般化したようです。
野生の猫が猫又に化けた説話としては、鎌倉時代に藤原定家が著した「明月記」があり、これには「南都(現在の奈良県)で猫又が一晩で数人の人間を食い殺した」という記述があります。野生の猫又は、もともとペットとして飼われていた猫が年をとって家から山に移り住んだと解釈されることもあったようです。そのため、猫は長い年月に渡って飼わない方が良いという考えも生まれていきました。
化け猫
次に紹介するのは化け猫と呼ばれる妖怪です。化け猫は文字通り猫が化けて妖怪化したものです。猫又と同様に年老いた猫が化け猫になるという俗信があります。
猫又との違いが曖昧で混同されやすい化け猫ですが、猫又は尻尾が2本なのに対して化け猫は尻尾が1本という違いがあります。また、化け猫は人間に変化する怪異を持ち、手ぬぐいを頭にかぶって踊る、人間の言葉を喋る、死人を操る、人間にとりつくなどの特徴があります。
化け猫の有名な説話としては「鍋島の化け猫騒動」というものがあります。「鍋島の化け猫騒動」とは、「佐賀藩2代藩主の鍋島光茂が囲碁の名人龍造寺又七郎を囲碁に負けた腹いせに殺し、それを知った又七郎の母(父という説もある)は、恨みを口にしながら自害。その遺体の血を舐めた猫が、城中に忍び込み化け猫となって光茂を苦しめた」という伝説です。
佐賀県白石町の秀林寺にはこの「鍋島の化け猫騒動」の怨念を供養するための猫塚があります。秀林寺の猫塚には今でも水やキャットフードをお供えしてくれる人がいるようです。
妖怪面耳刺-猫面
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江戸猫ぐらす 猫の丸皿-煙管・化粧箱入
化猫遊女
化猫遊女(ばけねこゆうじょ)は、江戸時代中期の娯楽本「草双紙」に登場していた猫の妖怪キャラクターです。化猫遊女の怪異は、遊廓に勤めている遊女が深夜になると化け猫に変なってしまうというものです。物語の中では「遊郭で遊女と客が一夜をともにし、客が眠っている間に遊女が猫の顔と人間の体を持つ化け猫に変身している」というパターンが典型でした。
鳥居清長画の「化物世櫃鉢木」では、遊女が夜中に化け猫になり海老を食べている様子が描かれています。
洒落ねこ 四角・猫のマグネット-薄化粧
おめでたシリーズ 猫のキーホルダー-踊り猫
まとめ
ペットとして可愛がられている猫ですが、その身体的特徴やミステリアスな性格から日本では古くから妖怪になると考えられてきました。その証拠に、猫又、化け猫、化猫遊女といった代 表的な猫の妖怪は、さまざまな書物や絵画に記録されています。愛くるしい顔付きとしぐさで人間を癒やすだけでなく、なんとなく不吉さを醸し出しているのは猫ならではの魅力とも言えますね。